「この人と働きたい」が「この会社と歩みたい」に変わるとき——14年かけて見えてきた、伴走型ビジネスの本質
「お客様のために」が言えなかった頃の話
創業してしばらくの間、私は「伴走者として」という言葉を意識的に使わないようにしていました。
意味がわからなかったわけじゃないんです。むしろ好きな言葉でした。ただ、「お客様に伴走します」と口にしながら、頭の片隅に次の案件のことや売上のことが浮かんでいる。そのズレを自分でわかっているから、使うたびにどこかきれいごとになってしまう気がして。
14年かけて、ようやくその言葉が素直に使えるようになってきた気がします。理由は単純で、取引先の方々と時間を重ねるうちに、「次の案件をどう取るか」より先に「この人の事業がうまくいくといいな」という気持ちが来るようになってきたからです。いつからそうなったかは正直わかりません。気づいたらそうなっていた、という感じです。
そうして「伴走者」という言葉がようやく自分たちの姿勢として使えるようになったと思ったら、今度はもっと大きな課題が見えてきました。それが今日書きたいことです。
「個人への信頼」と「会社への信頼」は別物だという現実
クライアントさんが増えてくると、当然ながら自分一人ではすべての関係を見られなくなります。
「筒井さんと一緒にやりたい」と言っていただけることは、本当にありがたいことです。でもそれはあくまで「私個人」への信頼であって、「株式会社L-planning」という会社への信頼とは、必ずしもイコールではない。
伴走型のビジネスをしている経営者なら、どこかで一度はぶつかる壁だと思います。
今の私なりに整理すると、こんな3つのフェーズがあるように感じています。
フェーズ1:個人依存期
「あの人に頼みたい」という関係が起点になる時期。創業期はほぼここから始まります。信頼は経営者個人に集中していて、その人が動けば仕事が回る。伴走の質は高くなりやすいですが、スケールはしません。経営者の時間と体力が上限になってしまう。
フェーズ2:移行期(今の私はここにいます)
個人への信頼を起点にしながら、会社全体への信頼に育てていこうとしている段階。この時期がいちばん難しいと感じています。スタッフが関わる場面が増えるにつれ、「筒井さんに頼んだのに、担当が変わった」という感覚をお客様に与えないようにするにはどうすればいいか、という問いと向き合うことになります。
フェーズ3:組織依存期
経営者個人がいなくても、会社として伴走の質が担保されている状態。ここを目指しているわけですが、正直まだ道半ばです。
移行期にぶつかる3つの壁
同じフェーズにいる経営者の方に少しでも参考になればと思い、私が実際にぶつかっている壁を書いておきます。
壁1:「らしさ」はマニュアルにならない
お客様が「この人と仕事したい」と思う理由は、スキルや対応速度だけじゃないことが多いと思います。その人の話の聞き方だったり、困ったときに真っ先に連絡をくれる感覚だったり。そういうものは、マニュアルに落とし込もうとすると途端にぎこちなくなってしまう。
だとすれば、「どう動くか」を教えるより、「なぜそう動くのか」という背景を一緒に考える機会を増やすほうがいいのかなと。ここ数年は、スタッフがクライアント訪問に同席したり、単独で動く機会を意識的に増やしてきました。はじめは「筒井さんに頼んだのに担当が変わった」という声をいただくこともありましたが、今では担当スタッフへの定着感が少しずつ出てきた気がしています。
壁2:経営者が「伝える」だけでは届かない
私が「お客様の事業が大事」といくら言っても、スタッフ自身がその感覚を体験しないと言葉は浮いたままになります。最近は、スタッフの側から「あそこの近況はこういう感じで…」と上がってくる頻度が増えてきました。小さなことですが、こういうところから変わってくるのかなと感じています。
壁3:「任せる」と「放置する」の線引き
スタッフに関係を育ててもらうためには、ある程度任せることが必要です。でも任せすぎると、経営者個人への信頼との落差が生まれてしまう。この加減が、移行期にいちばん難しいところだと思っています。今のところ私は「最初の1〜2回は一緒に動く、その後は本人に主導してもらい、状況はすり合わせる」という形を試しています。完成形ではないですが、少しずつ形になってきているかもしれません ^ ^
「伴走型ビジネス」を個人の才能で終わらせないために
伴走型のビジネスは、経営者個人の人間力に依存しやすい構造を持っています。それが強みになる時期はありますが、そのままにしておくと事業としての持続性に天井が来ます。
個人への信頼を会社への信頼に変えていくには、スタッフ一人ひとりがお客様の事業に本気で関心を持てる状態をつくることが必要だと、最近強く感じています。それは教育プログラムで一気に作れるものではなく、日々の小さな積み重ねで少しずつ育っていくものだと思っています。
「この人の事業がうまくいくといいな」という感覚を、経営者個人だけでなくチーム全体で持てるようになること。それが今、私がいちばん向き合いたいテーマです。このあたりをもう少し丁寧に育てながら、次なるステップへ進んでいけたらと思っています。