社長の「右腕・左腕」が会社を強くする——創業14年で気づいた、任せることの本当の意味
気づくまでに、数年かかった
弊社には、創業当初から一緒に歩んできたスタッフが2人います。
14年です。
創業時、マンションの一角で4人でスタートしたあの頃から、ずっと隣にいてくれた存在です。当時は「とにかく前に進む」だけで精一杯で、2人のことを「一緒に働いてくれている仲間」くらいにしか捉えていなかったかもしれません。
正直に言うと、数年が経ってようやく、2人が自分には持っていない能力を持っていると気づきました。
それも、じわじわと。なんとなく、という感じで。
「この人、自分よりこれが得意だな」と思う瞬間が少しずつ増えていって、気づいたら「ここは完全に任せよう」という判断になっていた。そんな感じです。
「自分でやらなければ」という思い込み
経営者というのは、なぜか「自分でやらなければ」と思いがちです。責任感ゆえ、というのもあると思うんですが、どこかで「自分が一番わかっている」という思い込みがあるのかもしれません。
創業期はとくにそうでした。すべて把握していないと不安で、任せることへの怖さもあった。
でも振り返ってみると、その「自分でやらなければ」という姿勢が、組織の天井を低くしていたんだと思います。社長がボトルネックになっている、という状態です。
2人に任せるようになってから、明らかに会社の動き方が変わりました。たとえば、自分が外出中にスタッフ間でちょっとしたトラブルが起きたとき、以前なら帰ってきてから自分が間に入って…という流れだったのが、いつの間にか「帰ってきたらもう片付いていた」という場面が増えてきました。報告を受けて初めて「そういうことがあったのか」と知る、という感じです。現場の流れをつかんで、スタッフ一人ひとりのことも見ながら動いてくれている。それは、数字で測れるような変化ではないんですが、確実に会社の「地力」が上がったと感じています。
大病と、もう一人の言葉
気づきが一番深かったのは、創業3〜4年目のころです。
ちょうど新しいサービスをスタートさせた矢先に、2人のうちの1人が大病にかかりました。先が見えない時期でした。正直、自分の中で「どうなるんだろう」という不安がずっとありました。
そのとき、もう1人のスタッフが言ってくれたんです。「彼が戻ってきたとき、ちゃんと居場所があるようにしておこう」と。
その言葉が、すごく心強かった。自分が言わなければいけない言葉を、自分よりも先に、自然に口にしてくれた。そのとき初めて、「ああ、自分だけではこの会社は成り立っていないんだ」と、頭ではなく体で感じたような気がします。
1人がいなくなって初めて、その存在の大きさに気づく。そういう経験でした。こういうことは、順調に進んでいる間はなかなか見えないものだと思います。
孤独な決断の場面で、助かっていること
経営判断というのは、最終的には孤独です。
「この方向で行く」と決めるのは自分ひとりで、その責任も自分が負う。そのプレッシャーは、規模が大きくなってもなくならない。むしろ増していくような気がします。
そういう場面で、2人の存在はとても大きいです。
自分が「こうしたい」と思っているとき、冷静に別の視点を出してくれる。反論ではなく、「こういう見方もある」という感じで。そのおかげで、独りよがりな判断にブレーキがかかることが何度もありました。
「あのとき2人がいなかったら、どうなっていたんだろう」と思う場面が、これまでに何度かあります。
意思決定の精度を上げるのは、情報やロジックだけじゃない。信頼できる別視点を持った人の存在が、経営判断の質を変えるんだと実感しています。
最初にやったのは、口を出し続けることでした
「任せる」というのは、自分には最初からできませんでした。というより、最初にやったのは任せることではなく、口を出し続けることでした。
「やり方が違う」「自分ならこうする」という感覚がどこかにあって、任せているつもりでもちょこちょこ介入していた。今思うと、それは相手が動きにくい状況を自分で作っていたんだと思います。
本当の意味で任せられるようになったのは、「この人の方が自分より得意だ」と素直に認めることができてからです。それも、さっと認められたわけじゃなく、じわじわと。大病のあの経験も含めて、数年かけて少しずつ腑に落ちていったという感じです。
プライドや不安を横に置いて「自分にない能力を認める」というのは、言葉にするとシンプルですが、実際にやるのはなかなか難しいことでした。少なくとも自分はそうでした。
今、一番嬉しいこと
創業14年を経て、今の自分が一番嬉しいのは、2人がのびのびと働いてくれていることです。
会社の業績とか、数字の達成とか、そういうことよりも、正直そこが一番です。
生き生きと動いてくれている2人を見ると、「ああ、いい会社になってきたな」と思えます。それは自分の力ではなく、2人が作ってくれている空気感です。
「右腕・左腕」という言葉があります。社長の両腕となって動いてくれる人材、という意味合いで使われることが多いですが、自分の感覚では少し違います。
右腕・左腕は、社長を補佐する存在というより、社長にはできないことをやってくれる存在。そう考えると、むしろ自分の方が彼らに支えてもらっている、というのが実態に近いかもしれません。
14年、ありがとうという気持ち
長く一緒にいると、「いて当たり前」になっていくのが人間の自然な感覚だと思います。自分もそうでした。
でもあの大病の時期に、もう1人のスタッフが言ってくれた「居場所を守っておこう」という言葉を、今でもときどき思い出します。あの言葉がなかったら、会社の空気はずいぶん違っていたかもしれない。
弊社はまだまだ課題の多い会社ですが、2人がいてくれるから、次のステップを考えられると感じています。そう思えるのは、間違いなくこの2人のおかげです ^ ^